(3) イズリントンにおける補助政策 イズリントン(London borough of Islington)は33あるロンドン・バラの1つであり、人口約17万人で面積は約15平方キロの小規模な自治体である。インナー・バラの1つであり、ロンドンの中心に位置しているが、少数民族や貧しい人々・失業者が比較的多く居住する地区として知られている15)。 このような特徴を有するイズリントンは、従来からボランタリー・セクターとの関係を重視してきた自治体であり、ボランタリー・セクターの活動を通じて貧しい人々や少数民族に対する多様なサービスを展開してきており、またそうした信念を強く持っている自治体である。ボランタリー・セクターへの補助金も1150万ポンドにのぼっており、ロンドン・バラの中では2番目に多いという。このような取り組みを行ってきた理由として、とりわけ1980年代は、少数民族対策として人種差別問題に力を入れてきたが、そうした問題に取り組んでいるボランタリー・セクターに対して政策的な援助を行うことを通じて、多様な問題を解決し、様々なニーズに対応してきたことがあげられる。 また一般的な理由としては、現政府はボランタリー・セクターの奨励策として自治体に対して補助金を出すが、その条件としてボランタリー・セクターによるサービスの提供を促進するようを求めていることがあげられる。例えば、コミュニティ・ケアと例にとると、財源の85%をボランタリー・セクターあるいはプライベート・セクターによって行うことを政府は求めている。自治体が直接的なサービスを行うことは避け、ボランタリー・セクターの協力を求めなければならないということになる、イズリントンのカウンシルは労働党が多数を占めているので、議員の多くは当然のことながら直接的なサービスの提供を望んでいるが、政府は自治体のそうした役割を減少させようとしている。 しかしながら、最近の財政難によって、ボランタリー・セクターへの補助は減少せざるを得ない状況に置かれている。新しく補助する団体はほとんどなく、また従来から補助している団体の数を減らす努力をしているという。現在補助している団体の数はおよそ190〜200の団体であるが、補助金を受けずに活動している団体もあり、団体の数を正確に把握することはできていない。1994年の調査では、補助金を受けていない団体が100以上あったとのことである。また、団体の規模も大小様々であり、数人のパートタイム・スタッフで運営している小さな高齢者ランチ・クラブから、20〜30人のスタッフによる大きなコミュニティ・ケアの団体まである。
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